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春闘の変遷と今後の展望~2015年およびその後の賃上げ動向を予測する~

2014/12/17
調査部

○1990年代終盤以降、賃上げのほとんどが定期昇給となる中、2014年の春闘は大企業を中心に数年ぶりにベースアップの実施が相次ぎ、賃上げ率は2.19%と13年ぶりに2%を超えた。背景には、(1)好調な企業業績、(2)労働需給のタイト化、(3)消費増税を見据えた政治的圧力、という要素があったと考えられる。

○1990年代後半以降、日本経済は長い低成長とデフレに入り、賃上げ率が低下した。ベアが実施されていた1998年までは、物価上昇率と賃上げ率には正の相関関係がみられたが、1999年以降は物価上昇率にかかわらず賃上げ率は定昇程度で一定となっている。

○雇用の非正規化の動きもあって、労組の組合員数は減少し組織率は低下している。2013年時点で雇用者5人のうち4人以上が労組に加入しておらず、春闘で賃上げが行われても、それは一部の労働者に限定されたことであり、労働者全体でみた賃金は上がりにくい状況になってきている。

○経営者側からみた場合、賃金の改定には企業業績の動向が最も重要であるが、基本的には収益が増加した場合にも、恒久的な人件費の負担増に繋がるベアではなく、一時金として労働者に還元する傾向が強い。また、近年では同一産業内でも企業ごとに戦略で優勝劣敗が分かれ業績は大きくバラつき、経営環境も複雑化、多様化する中、決まった基準で横並びでの賃上げができなくなっている。

○間もなく2015年の春闘が本格的にスタートするが、労働者側にあたる連合は賃上げ率4%(ベア2%)という前年以上に強気の姿勢を示している。しかし、企業間における、労働需給のひっ迫と利益の改善というギャップは大きく、”無い袖は振れない”という中小企業にまで賃上げの動きが広がるとは考えにくい。一部の大手企業では昨年に引き続きベアが行われる可能性があるものの、全体でみると賃上げ率の伸びは縮小し、2.0%程度となる予測だ。

○これまでは、デフレが続いてきたこともあって、名目賃金が上がらなくても、物価の下落分だけ実質賃金は押し上げられていた。物価が上昇に転じ労働需給もひっ迫する中、労組側からの賃上げに対する要求を強めやすい環境は構造的に整いつつある。脱デフレが定着するにつれ、春闘においてベアを含めた賃上げの交渉が再び活発になるとみられるが、1990年代後半以前と同じスタイルに戻るわけではなく、ワーク・ライフ・バランスの実現や非正規雇用の処遇改善という役割を担った新たな姿を探していくことになるだろう。

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