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③琵琶湖淀川流域における生物多様性の保全・活用事例と課題

2018/02/20

本稿では、琵琶湖淀川流域で取り組まれている生物多様性に関する保全・活用事例をいくつか紹介するとともに、今後の課題を整理したい。

滋賀県が立ち上げた「魚のゆりかご水田プロジェクト」は、琵琶湖周辺の水田や水路の保全再生活動を実施するとともに、そこで生産される付加価値農産物を販売する取り組みである。京都市等が支援する「京の恵みを生かす会」は、地元漁協等と連携し、天然アユをシンボルとした流域の生物多様性の保全再生を目指すとともに、川魚の食文化再興に取り組んでいる。NPOや企業、大学等多様な主体が連携する「淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク」は、天然記念物の淡水魚イタセンパラをシンボルに、外来魚駆除や河川清掃を実施し、淀川の生物多様性保全再生を目指している。大阪府は「おおさか生物多様性パートナー協定」制度を制定し、企業が実施する事業所敷地内のビオトープ等を活用した生物多様性保全活動を支援している。関西広域連合は、流域の生物多様性ホットスポット等を教育や観光資源と位置づけ、それらをめぐるエコツアーを開催した。関係行政や市民団体、旅行代理店等が参加し、モデルケースが紹介された。

生物多様性の保全・活用に向けた取り組みには、科学的根拠に基づく計画策定が求められる。これらは主に生物系研究者が担うものと思われるが、ほかにも経済的評価や行政への施策提言等、幅広い分野の研究者の参画が求められる。今後、生物多様性の主流化とともに、これら研究者や研究機関の役割はますます大きくなるものと思われる。

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