経営戦略
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~文化的アイデンティティを再構築する創造都市~
本稿においては、スペインのバスク自治州の中心都市ビルバオの食文化を対象として分析している。ビルバオはUNESCO創造都市ネットワークのデザイン都市に認定されており、グッゲンハイム美術館に代表される建築デザインで有名な都市であるが、実は食文化も極めて高水準である。
ビルバオおよびバスクの料理および食文化が高い評価を獲得した背景には、ビルバオおよびバスクのアイデンティティと密接に関連する5つの事象の存在を指摘できる。それらは、①自由と独立の象徴としてのタラ料理、②美食倶楽部「ソシエダ・ガストロノミカ(Sociedad Gastronómica)」、③バスク・ナショナリズムを増幅させた「ポテオ」と「ピンチョス」、④反権威主義としての「ヌエバ・コッシーナ・バスカ(Nueva Cocina Vasca)」、そして、⑤レシピのオープンソース化と「分子ガストロノミー」、である。
日本においても、食をテーマとした観光振興が国および各地域で議論されており、今後のインバウンド観光においても、「フード・ツーリズム」は巨大な可能性を秘めていると推測される。ただし、バスクおよびビルバオの事例研究から浮き彫りとなった通り、単においしい食材や料理が存在するというだけでは、食を通じた地域の活性化には十分ではない。食に携わる地域の人々の営み、すなわち「食文化」が地域のアイデンティティと密接に関連する形で存在し、それが観光客に対して分かりやすく説明・提示されていくことが必須であろう。