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「聞き書き」の自己分析

~「オープンな対話」の可能性~

2016/11/09

本稿では、私が勤務する高齢者通所介護施設・デイサービスすまいるほーむで、利用者の提案で作り始めた「すまいるかるた」の製作のプロセスを、それを記録した映像をもとに分析することで、私が介護現場で実践してきた「聞き書き」の特徴と具体的な方法について示していく。介護現場での「聞き書き」は、その実践の積み重ねの中で、聞き手である私と語り手である利用者との「1対1の閉じられた対話」から、他の利用者やスタッフたちも巻き込んで自由に展開されていく「オープンな対話」へと開かれていった。それによって、閉塞的になりがちだった介護現場そのものの雰囲気やそこに集う人たちの関係性が好転し、介護現場が利用者にとってもスタッフにとっても互いの存在を認め合い、思いやれる心地よい居場所になっていったのであった。

こうした「オープンな対話」による「聞き書き」で作った「すまいるかるた」の製作プロセスを分析してみると、「聞き書き」は民俗学の知識とか、あるいは相談援助の技術といった専門性がなければできないわけではない、ということが分かってくる。むしろ、聞き手となるスタッフが圧倒的な力でもって先導的に語りを引き出したり、方向性を決めたりするのではなく、そこに参加する利用者やスタッフ等、立場や経験の異なる多様な人たちの言葉のやり取りが重なり合うことによって、必然的に語りが深まり、より洗練されたかるたが創り出されていくのであり、それを楽しめばいいのである。「オープンな対話」による「聞き書き」がもっと気軽に広がり、介護現場がより豊かで創造的になることを期待したい。

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