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日本のモノづくりの文化論的考察

2009/07/01

 モノづくりという行為は、思考と同様に人間固有の営みであり、きわめて根源的なものである。その営みを組織化し、経済のしくみに取り込んだものが製造業である。日本人は古来、このモノづくり能力に長け、今日では世界有数の「モノづくり立国」として存在感を誇っている。よく指摘される工業化社会から情報化社会への移行に対しても、両者を不可分のものとして捉え、工業技術の情報化、情報技術の産業技術としての定着に成功している。
 産業史や技術史の教えるところでは、技術と文化は相互に密接な関係にあり、それらが互いに影響し合うことによって独自の技術文化が形成される。この場合、固有の文化が固有の技術の発展を促すアプローチ(いわゆる文化に根ざした技術の創出)と新技術・新製品の創出と普及が新しい生活文化やライフスタイルを生み出すアプローチ(いわゆる技術による文化の形成)がある。筆者はこれらを「技術の文化化」と呼び、技術の多様化や個性化を促す源泉と考えている。
 日本の技術開発や製品開発手法が独自性を発揮し、モノづくりの面で競争優位にあるのは、文化に根ざした「日本的技術発想」に依拠するところが大きい。本稿では、日本的技術発想の事例として、工業製品の軽薄短小化、メカトロニクス化に代表される技術融合、模倣を超える工夫・考案力、環境保全・省資源への独自の対応などを取り上げた。
 21世紀の日本が目指すべきは「技術文化立国」の道である。幸い日本には長い歴史や地域文化に育まれた伝統技術や地域産業があり、それらが日本の技術文化を実り多いものにしている。日本ならではの技術による国際貢献にも積極的に取り組むべきである。

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