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経営リスクとしてのメンタルヘルス

2008/04/01

 国内の年間自殺者は約3.2万人と、交通事故の約4倍に達し、自殺率は先進国中最も高い(2004年度は10万人中24人、世界9位)。また、米国などでは自殺者に高齢者が多いのに対し、日本の自殺者の中心層は40~50代の働き盛りの男性である。その背景としては、バブル崩壊と長引いた経済不況がもたらした格差と困窮、失業問題など構造的要因が挙げられる。
 翻って、企業にとっても、近年、長時間労働や成果主義の導入、IT化、単身社員の増加、それらにともなう人間関係の希薄化等によって、メンタルヘルス不全者の増加など問題が顕在化してきた。メンタルヘルスは、その患者数こそ生活習慣病の数分の1に過ぎないが、メンタルへルス不全が企業に与える損失は大きく、メタボリック・シンドロームとともに、今や企業の二大健康課題のひとつとして、急速に存在感を増している。
 このような状況を受け、国では、2000年頃から職域のメンタルヘルス対策を重視し、2006年度には、「労働安全衛生法等の一部を改正する法律について」で、長時間労働者の医師による面接指導実施を義務付けた。
 その結果、企業での対策にはずみがつき、啓発等を中心に、徐々に浸透しつつある。
 しかしながら、メンタルヘルスは比較的新しい健康課題であり、その取り組みは緒についたばかりで、依然として質・量ともに不十分なのが現状である。メンタルヘルスは個人の自助努力だけで改善させることは難しく、組織として根本的な解決を図る必要があり、さらには、経営と結びつけた投資として扱われるべき性質のものである。
 本稿では、組織の構成員という最も重要な経営資源を最大限に活かすためのメンタルヘルス対策を検討する。

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