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世界経済の成長とグローバルマネー

2008/01/01
五十嵐 敬喜

 90年代以降の世界経済の持続的な成長は、供給力が新興諸国で増大する一方、それを先進諸国の強い需要が吸収するという形で実現した。先進諸国にとっては、好況を謳歌しても従来なら引き起こされていたはずのインフレに見舞われなかったために、需要の増加にブレーキを踏む必要が生じなかった。そのことは、輸出主導で成長する新興諸国の成長率をいっそう高めることとなった。誰にとっても望ましい循環が機能していたと言っていいだろう。
 とはいえ、定義上、どこかの国の輸出はその相手国の輸入に一致するわけで、全体で見れば所得は増加しない。したがって、貿易取引が行われることが世界経済の成長率を高める必然性はない。
 それでも貿易の拡大が世界経済の成長に寄与するのだとすれば、おそらくその大きな理由は、先進国への輸出で外貨を手にした新興国がその外貨を先進国に投資することによって、先進国経済が成長力を高めさらに輸入を増やすという循環が機能しているからだろう。現実には、この循環は「アメリカの赤字vs.世界の黒字」という形をとっている。アメリカが供給する金融資産にはそれだけの魅力があり、そうした形でマネーが流入してくることがアメリカ経済を活性化させているのだと考えられる。
 こう考えれば、ドルの流動性を供給しているのはアメリカであって、そのコントロールはFRBが一義的に行っていることは明らかである。それでも流動性が過剰となりうるのは、流動性の総量ではなく回転率が大幅に上昇しているからだと考えられる。近年流動性の回転率が著しく上昇した背景としては証券化の進展が指摘できる。

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