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日本の林業・林産業のあるべき姿に向けて

2007/10/01
前田 滋

 持続可能な資源として期待される森林資源。本稿では国内の森林資源の活用状況に関して、海外の状況と比較し、外材との格差を浮かび上がらせて、森林・林業・林産業の観点からこの分野における課題、あるべき姿、改善例を紹介する。
 これまで国内の森林は未成熟だったことや、原木の加工に関するイノベーションが進んでいなかったことなどから、国内の森林資源を十分に活用できない状態であった。しかし、近年、国内の人工林の多くが成熟期を迎えたことや、中国・インド等の諸外国での木材需要の増加、為替の影響等により、国産材の活用に注目が集まっている。
 これまでに当社のコンサルタント、研究員が関わった業務を総括し、国産材の製材品供給において外材との格差を縮めるために取り組まねばならない国内の林業・林産業の課題を次のように整理して、このいくつかについて我々の取り組みを紹介する。①素材生産量(原料供給量)の不足、②素材生産業のコスト意識の欠如、③製材業のコスト意識の欠如、④ニーズに対応していない非合理的な流通構造。
 素材生産に関しては、日本は森林率が高いにも関わらず、木材自給率が約20%と低く、成長量の範囲内でこれまで以上に原木生産・国産材利用を行うべきである。そのためには、諸外国より2~4倍ほど高い素材生産コスト削減のための作業の効率化や、その基盤としての路網などのインフラ整備が必要である。また、国内の森林所有形態は小規模であり、素材生産効率向上のためには小規模な森林を集約化(団地化)することが必要不可欠である。
 林産業に関しては、これまで手厚い補助制度が適用され、多くの場合コスト意識が欠如した状態で経営されている。製材のコストダウンを図る上では、スケールメリットが発揮できる製材規模への拡大や、外材に対して価格競争力が発揮できる設備の整備などハード面と同時に、他業種と同レベルの企業競争力が発揮できるような経営体制づくり等のソフト面の充実が必要と考えている。

研究開発第2部(大阪)
主任研究員
前田 滋

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