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2014年1~3月期のGDP(1次速報)結果

2014/05/15
調査部
小林 真一郎

本日公表された2014年1~3月期の実質GDP成長率は前期比+1.5%(年率換算+5.9%)と消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって高い伸びとなった。前期比でのプラスは6四半期連続である。

民需全体では前期比+2.3%と伸びが急上昇しており、中でも消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって押し上げられた個人消費が前期比+2.1%と、前回消費税が引き上げられた1997年1~3月期以来の高い伸びとなった。住宅投資も前期比+3.1%と、消費税率引き上げを控えての駆け込み需要などによって2013年中は着工件数が増加していた影響により、8四半期連続で増加した。

設備投資は前期比で4四半期連続のプラスとなり、伸び率も+4.9%に高まった。企業業績が好調に推移する中、企業の景況感も持ち直しており、設備投資マインドも改善しつつあると考えられる。在庫投資は、駆け込み需要によって流通在庫が減少していることを反映してマイナス寄与となった(前期比寄与度は前期比-0.2%)。

これらの民需の実質GDP成長率に対する寄与度は前期比+1.8%と6四半期連続でプラスとなるとともに、今回の景気回復局面において最大となった。他方、公的需要全体の前期比寄与度は-0.1%と7四半期ぶりにマイナスとなった。政府消費は前期比+0.1%と増加が続いたものの、公共投資は、経済対策による押し上げ効果が剥落して前期比-2.4%と5四半期ぶりにマイナスとなった。以上の結果、内需の前期比寄与度は+1.7%となり、景気全体を押し上げた。

一方、外需の前期比寄与度は-0.3%と3四半期連続でマイナスとなった。輸出は前期比+6.0%、輸入は同+6.3%とともに増加率が高まったが、推計に用いられる国際収支統計の見直しの影響によりそれぞれ過大に推計されている可能性がある。

名目GDP成長率は前期比+1.2%(年率換算+5.1%)と6四半期連続でプラスとなった。また、経済全体の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターの前年比は、2009年7~9月期以来の0.0%となった。GDPデフレーターの前年比は、円安で輸入デフレーターが上昇(同+6.2%)したことによって押し下げられており、内需デフレーターでみると同+0.7%と3四半期連続でプラスとなった。個人消費デフレーターが同+0.6%と伸び率が高まってきていることが主な原因であり、エネルギー価格上昇、人手不足と賃金上昇、円安による輸入物価の上昇といった影響が物価全体に徐々に浸透している。もっとも、GDPデフレーターの季節調整済み前期比は-0.2%とマイナスとなっている。内需デフレーターは同+0.1%と上昇幅が縮小しており、国内物価が上昇するペースは緩やかになっている。

2014年4~6月期は、需要を先食いした反動によって家計部門を中心に調整の動きが強まり、一時的にマイナス成長に転じることは避けられない。

今後、4月のデータが順次発表されるにつれて、反動減と増税の影響の大きさが徐々に判明してこようが、最も早いタイミングで発表された4月の新車登録台数(普通乗用車+小型乗用車)をみると、前年比-11.8%と8ヶ月ぶりに減少に転じている。しかし、97年4月時の同-14.0%や2013年前半の落ち込みと比べると小幅にとどまっているうえ、軽自動車では同+5.3%と10カ月連続でプラスを維持している。また、百貨店売上高なども増税直後の落ち込みから次第に持ち直しているとされており、外食やコンビニエンスストアの売上は増税後も底堅さを維持しているようだ。

こうした状況だけみれば、増税の影響は懸念されたほど大きくはないようにうかがえる。ただし、自動車では購入が3月末の駆け込みに間に合わず、4月にずれ込んだケースもあったと考えられる。また、増税後の急減を回避するため、小売業界では様々な対策が打ち出されており、この効果によって販売が下支えされている面もある。このため、増税後の個人消費の実力については、5月以降の数字もみて慎重に判断する必要があるだろう。

また、鉱工業生産については、2月に急減した後、3月も前月比+0.3%と小幅増加にとどまっており、製造業が増税後をにらんで早めに生産にブレーキをかけた可能性が指摘される。このため、生産予測調査で4月に同-1.4%と減少し、5月も同+0.1%と底ばい状態にとどまる計画となっていることと合わせて考えると、増税後の生産の落ち込み幅も決して小さくはない。

一方、雇用情勢の改善が続いていることは、増税後の景気にとって明るい材料である。3月の完全失業率が前月と同じ3.6%と低水準にあり、同月の有効求人倍率も4ヶ月連続で1倍を上回った。さらに、今年の春闘において大企業を中心にベアの実施や一時金の引き上げが行われるなどの動きが広がっており、雇用情勢にあわせて所得情勢も改善してくることが期待される。もっとも、企業の雇用コスト増加に対する慎重な姿勢は続いており、中小企業も含めた企業全体では改善ペースが鈍いリスクがあり、4月以降の賃金や夏のボーナスの動向を見たうえでなければ所得の改善度合いは判断しづらい。

企業業績の改善が続いていることや、海外経済の持ち直しが続く中、輸出が増加すると期待されることなどから、増税後に景気が後退局面に陥るリスクは小さく、7~9月期にはプラス成長に転じると考えられる。ただし、内需が意外と底堅く推移したとしても、輸出が増加しなければ、増税後の景気の持ち直しの時期が後ずれするリスクが高まってくる。

調査部
主席研究員
小林 真一郎

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