経営戦略
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会社は「ヒト、モノ、カネ、情報」などの経営資源を保有しています。その中でも、“ヒト”は成長する経営資源であり、投資的な働きかけにより経営成果に繋がる、という議論があります。しかし、この“ヒト”へのさまざまな投資が、経営にどの程度貢献したかという効果までは、あまり注目されていませんでした。
そこで、本コラムでは、“ヒト”への投資状況やその貢献度を明らかにする指標を体系的に定めたガイドラインであるISO30414の概要と、日本企業でISO30414を活用するメリットをご紹介します。
ISO30414は、国際標準化機構(ISO)が定めている人的資本のデータ収集、測定、分析、報告に関するガイドラインです。策定されたのは2018年ですが、米国証券取引委員会(SEC)が2020年8月に人的資本の開示をルール化したことで、ISO30414が人的資本開示のフォーマットとして日本でも注目を集めるようになりました。
ISO30414では、人的資本を「組織の最も重要な経営資源およびリスクの一つ」と位置づけ、以下の11の領域について、社内外の利害関係者に対して自社の人的資本の現状と目指す姿を客観的な指標で示すよう定めています。
※出所:ISO「ISO30414:2018. Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting」(筆者翻訳)
ISO30414で定められた項目に沿って、人的資本に関わるデータを収集、測定、分析、報告することのメリットとして、以下が挙げられます。
上記に加え、人的資本の開示が義務化されていない日本企業でISO30414に対応する最大のメリットは、“人事部門の変革(トランスフォーメーション)”にあると考えます。
長年、「日本企業の人事部門は、個々の人事機能の運用に特化したオペレーション人事だ」と言われてきましたが、このISO30414に対応することで、人事部門の施策などがどの程度経営に貢献しているか可視化されるようになります。この可視化された指標をもとに経営層と注力すべきことを決め、改善に取り組むことで、人事部門を経営に貢献する部門へと変えることができます。
人的資本に関する情報を収集するためには、人事部門のDX化が欠かせません。具体的にはHR-Techと呼ばれる各種テクノロジーを活用し、情報システム系の部門や事業部門と連携することで、必要な情報を自動的かつタイムリーに取得できる体制を構築していきます。
これらの取り組みからも分かる通り、ISO30414への対応は、人事部門を変革するドライバーとなり得るのです。
“人事部門の変革”と聞くと難しいことのように聞こえますが、ファーストステップは非常にシンプルなものです。
ISO30414への対応は、社内に散在する人材・人事に関する情報を一元化することから始まります。一元化した情報をISO30414で設定されている指標に当てはめ、不足している情報をどのように収集するかを検討します。
この既存の情報の一元化や、不足している情報の収集方法を検討するプロセス自体も重要です。人事部門がこれまで取り組んできた人事施策やその効果を客観的に見直し、既存施策の磨き込みや見落としていた施策の検討に繋がる可能性があるからです。そのため、ISO30414への対応を検討する際は、一足飛びにHR-Techの導入や開示体制の整備を議論する前に、まずは足下の人材・人事に関する情報をしっかり整理することをお勧めします。
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