経営戦略
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本サーチ・ナウ「循環型社会に向け注目されるリユース業界の動向」(2010.10.14)の中でも紹介しているが、循環型社会形成推進法の中で、3Rや3Rの優先順位が示されている。3Rとは、発生抑制に相当するReduce(リデュース)、再使用に相当するReuse(リユース)、再資源化に相当するRecycle(リサイクル)のことである。
このうち、リサイクルについては、容器包装リサイクル法、食品リサイクル法、家電リサイクル法、自動車リサイクル法、建設リサイクル法といった法律が作られ、推進されてきたこともあり、取組が進み、なじみのある言葉となったといえる。
一方、3Rのうち、リサイクルを除くリデュース・リユース(2R)については、生活者になじみが薄く、取組が遅れているともいわれてきた。しかし、3Rの優先順位からすれば、リデュース・リユース(2R)のほうがリサイクルよりも優先順位が高く、取組の重要性も高いといえる。
近年、2Rを生活の具体的場面で普及させ、ライフスタイルの見直しを図ろうとする動きが活発化している。
この数年で急速に進んだ動きとして、”スーパーでのレジ袋有料化”が挙げられる。
環境省が平成21年1月に行ったレジ袋に係る調査によれば、「平成20年11月1日現在、47都道府県のうち38道府県(全体の81%)では、既に何らかの方式でレジ袋削減の取組が実施されている。この時点で取組を行っていない9都県についても、3県では平成21年度中にも実施する具体的な計画があり、5県では取組を検討する予定と回答されており、ほぼ全国で取組が進展している。」とされている。
また、「平成20年11月1日現在、富山県、山梨県、沖縄県の3県でレジ袋の有料化を全域で一斉実施しているほか、平成22年3月末までに、5都道府県において、レジ袋の有料化を全域で一斉実施及び実施予定である」など、特定のスーパーにおける点の取組ではなく、面的な取組となりつつある(図1)。
有料化を実施した市町村のうち、有料化の実施前後に、レジ袋辞退率又はマイバッグ持参率を調査した市町村の回答をみると、レジ袋辞退率では実施前28%→実施後87%に、マイバッグ持参率では実施前41%→実施後83%へと大幅に改善しており、有料化の実施がレジ袋削減に大きな効果があることが確認されている(図2)。
定量的な削減効果の把握が待たれるところであるが、レジ袋削減への取組は、化石資源の削減の点ではリデュースに寄与しているほか、マイバッグの持参の点からみればリユースの推進に寄与しているといえる。
図1 都道府県レベルでレジ袋有料化を全域一斉実施している又は実施予定の状況
図2 レジ袋辞退率、マイバッグ持参率からみた有料化の実施による効果(実施前後に調査を行った市町村の平均値)
(資料)図1、図2とも環境省ホームページ
昨年10月に東京都内の山手線、京浜東北線、中央線等の車内広告にAKB48が登場した。これは、九都県市廃棄物問題検討委員会が進めている「九都県市はマイボトル宣言」キャンペーンの一環であったが、生活者が持参したマイボトル(自分の水筒、タンブラー等)にコーヒーショップ等が飲み物を販売することを促進しているものである。
マイボトル使用により、使い捨てカップ等のごみが出ない点で、リデュースに寄与するほか、マイボトルを繰り返し使用することはリユースの推進に寄与しているといえる。
環境省においても、昨年6月から「マイボトル・マイカップキャンペーン」を開始し、マイボトルやマイカップ(自分のコップ、ジョッキ等)を持参した場合に飲料等のサービスの提供を受けられる動きを推進している。
また、昨年6月から7月にかけて、フェリス女学院大学緑園キャンパス、横浜市立大学金沢八景キャンパス、大阪大学豊中キャンパスにおいてモニターとなる学生(400人~500人)を募り、マイボトル(ステンレス製魔法瓶、水筒等)を使ってもらうとともに、浄水器・給水機の設置、学食等でマイボトルを使う人への飲料の割引等マイボトル・マイカップが利用しやすい環境を整備し、マイボトル・マイカップの普及に向けた課題把握、環境整備の効果把握を行っている。
レジ袋削減、マイボトル・マイカップなど、ライフスタイル転換につながる取組は、生活者の賛同・協力があって初めて実現するものであるが、これに向けたメーカーや小売業者の協力も必要とされる。
とりわけ、食品に関連する取組は、安心・安全の問題とも密接に関連することから、メーカー、小売業者も慎重にならざるを得ない。
レジ袋削減やマイボトル・マイカップ推進は、環境省等の国のモデル事業において、その有効性を実証してきていることから、これらに続く2Rの取組の普及促進にあたっても、モデル事業等を通じた社会実験を通じて、実証していくことが有効であると考えられる。
例えば、スーパーでのノントレイへの取組なども社会実験を行う余地のある取組と考えられる。スーパーで食品トレイに載せられ、ラップをかけられていた鶏肉等を袋詰めや真空パック詰めに変え、販売することで、包装資材や食品ロスの削減が期待できる。一方で、袋詰めの鶏肉等は見た目が悪くなることで売上減少につながる懸念から、スーパー側も導入を躊躇している状況にある。そのため、社会実験を通じて、環境負荷低減効果や、スーパーの経営にも悪影響が出ないこと等を実証していくことが、取組の推進、ライフスタイルの転換に向け、重要であろう。