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容器包装リサイクルのコスト低減に有効な店頭回収

2011/12/28
櫻井 仁

容器包装リサイクル法は当初の目的を達成

 我が国には、循環型社会形成を目的に、循環型社会形成推進基本法があるほか、個別リサイクル法として、容器包装、家電製品、自動車、建設副産物、食品を対象とした法律が存在する。他のリサイクル法に先駆けて平成7年6月に制定、平成9年4月から施行されたのが容器包装リサイクル法である。
 平成7年当時は家庭から排出されるごみの最終処分場がひっ迫する恐れがあった。そのため、家庭から排出されるごみの重量の約2~3割、容積で約6割を占める容器包装廃棄物のリサイクルを進めることが急務であった。
 平成12年以降のごみ排出量の減少、最終処分場への埋立量の減少、これに伴う最終処分場のひっ迫懸念の低下等から、容器包装リサイクル法の当初の目的は達成された感がある。

自治体による収集運搬、選別保管のコストが高価であり、コスト低減策の実施が急務

 しかし、プラスチック製容器包装についていえば、原材料に戻す材料リサイクルを最優先し、燃料としての利用が緊急避難的な措置にとどまり、実際には燃料としての利用が認められていない状況にあることも影響し、プラスチック製容器包装をリサイクルするために多大な費用を要している。
 また、市町村による収集運搬、選別保管にも多くの費用を要している。容器包装以外のプラスチックのリサイクルの在り方に関する懇談会(第1回)配布資料によれば、我が国の平成19年度のプラスチック製容器包装の収集運搬費用は31,412~45,515円/トン、選別保管費用は28,656~42,765円/トンとなっている。経済産業省委託調査「国内外の容器包装リサイクル制度の比較・分析に関する調査報告書」(平成23年3月)によれば、フランスやベルギーの収集運搬費用はそれぞれ126€/トン、193.99€/トンとなっており、我が国の収集運搬費用よりも安価である。同様に選別費用について海外の数値をみると、ドイツの軽量容器選別費用は150~225€/トン、ベルギーの選別費用は173.52€/トンとなっており、我が国の選別保管費用よりも安価である。
 諸外国の回収対象物が我が国と異なること等、一概に比較できない面があるにせよ、我が国の自治体による分別収集、選別保管のコストは高価であり、コスト低減策の実施が急務であるといえよう。

収集運搬、選別保管コストの低減に向け、店頭回収は有効ではないか?

 店頭回収は、スーパー等の小売店の店頭に回収容器を設置し、家庭で洗浄した容器包装を持参してもらう仕組みである。足立区のPETボトル店頭回収の場合、自治体のステーション回収に比べ経済的には53%の低減効果が見込まれるという試算結果がある。(CO2排出量では約21%の削減効果がある。)
 環境省「容器包装廃棄物の店頭回収に関するアンケート調査報告書」(2008年3月)によれば、小売店全体での店頭回収実施率は52.8%と、小売店における店頭回収は、家庭や自治体に周知されつつある。回収実施品目をみると、PETボトル80.4%、アルミ缶が78.7%、スチール缶が73.8%と、PETボトル、アルミ缶、スチール缶は店頭回収の代表的品目である。このようなデータを踏まえると、コスト高の自治体回収、選別保管から、小売店における店頭回収に転換することで、収集運搬や選別保管コストの低減が図れるのではないかと考えられる。

廃棄物処理法違反との嫌疑をはらし、店頭回収の推進を!

 しかし、店頭回収を推進するにあたり、店頭回収は廃棄物処理法に違反しているとの指摘もある。家庭から排出された廃棄物を小売店が回収し、これを廃棄物として処理委託するためには、一般廃棄物処理業者に委託しなければならない。現状、店頭回収を行った容器包装の処理委託先は一般廃棄物処理業者でない事例が多く、このことが廃棄物処理法に違反しているとの指摘につながっている。
 ただし、回収後の容器包装が有価で販売できるものであれば、回収された容器包装は廃棄物としての枠組みからはずれ、廃棄物処理法の適用を受けることなく、有価物として販売できる。今後、自治体の普及啓発活動の下、家庭で洗浄を行った良質な容器包装を一定ロット以上小売店が回収しうる状態を作り出せれば、持続的に有価物として販売することが可能となろう。

持続可能社会部
主任研究員
櫻井 仁

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