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自分らしく人生を締め括るための『生前準備』

2012/05/24
豊島 竹男

注目される「生前準備」

「自分らしく生きたい」と願うことと同様に、「自分らしく人生を締めくくりたい」と願う人々が増えているという。最期をどこでどのように迎えたいのか、終末期医療はどうしたいのか、どのような葬儀を希望するのか、お墓をどうするのか、財産を誰にどのように相続するのか・・・等々、人生の締め括りを迎えるにあたって考えておくべきことは多く、その希望は近年多様化し、様々なニーズが表出化してきているという。
また、当然ながら、自分の死は、自分だけの死に留まらない。残される家族や愛する人々にとって大きなショックであることは言うまでもなく、例えば、配偶者の死によって数年間立ち直れない程のストレスを抱えてしまう人々もいる。
このような状況の中、自分らしく人生を締めくくるために、また、残される家族や愛する人達のために、自分自身で人生の締め括りの準備をする『生前準備』が近年注目されている。

生前に何を準備するのか

生前に何を準備すべきか、それを考えるために、実際の死後の後始末で、どのような出来事や問題が発生するのかを考えてみたい。
一般的に、人が亡くなった後は、まずは数日内に葬儀の準備・施行がある。その直後に四十九日等の法事や納骨、お墓の問題が発生する。それに並行して、何十種類もの事務手続きが発生するといわれている。これらの対応によって、残された家族等は、心痛の中で突然大きな負担を背負いながら、ヘトヘトになっている。
これらの対応が終わったらすぐに、故人の生活の場の整理、財産相続などの問題が発生する。特に相続に関しては、多額か否かにかかわらず、複雑で感情的な問題になりかねず、相続の問題で、仲の良かった家族がバラバラになってしまうことも多い。
問題は死後の後始末だけではない。老後や最期の迎え方について、自身の希望や意思は明確にしておかなければならない。これらの確認が不明確で、家族が困り果てる場合も多い。
さらに、経済的な側面で問題点を探せば、人が死亡すれば、その段階で相続が発生するため、銀行口座は凍結され、家族の生活に不便が発生する場合がある。また、例えば、家族のために内緒で掛けていた生命保険は、それを家族が知らなければ、請求することすらできない。
人生の終末期に発生する一般的な問題を列挙しただけでも、これだけの問題が発生している。生前準備の必要性が注目される所以であろう。

生前準備の実態と今後の課題

自分らしく人生を締めくくるために、また、残される家族等のために、何をどのように準備すればよいのだろうか。
まずは家族と話し合うこと、必要なことは伝えておくことが重要である。「自分や家族の最後なんて考えたくもない。縁起でもない」といって準備を先延ばしにしてはならない。
遺言の作成も必要である。遺言書については様々な誤解も多いが、正式な遺言書を作成することによって、終末期や死後の希望を叶え、家族の負担も軽減できるケースは非常に多い。昨今では、人生を振り返り、終末期や死後の希望、伝えるべき情報等を一冊にまとめる「エンディングノート」なども認知度が高まっている。
なお、経済産業省の調査結果によれば、遺言書を作成している人はわずか1.7%に過ぎず、遺産相続の方法をすでに決めている人も4.4%に過ぎない。その一方で、半数近くの人は「準備すべきと思っているが、まだしていない」と答え、生前準備が必要と考えていても、実行している人は少ない実態が明らかとなっている(注1)
生前準備は、それを強制するものではないが、その必要性を多くの人々が理解した上で、必要と思うが準備できていない人に対しては、情報を提供し、サポートがなされるような社会システムが求められているのではないだろうか。そのサポート・供給体制、社会基盤は未だ整備途上である。

(注1)経済産業省が平成24年1月に実施したアンケート調査であり、インターネットで全国の30歳以上の男女4,181人から回答を得たもの。(詳細は、経済産業省「安心と信頼のある「ライフエンディング・ステージ」の創出に向けた普及啓発に関する研究会報告書」)(外部リンク)

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