経営戦略
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わが国の自動車産業は、基幹産業としてこれまでの日本経済を牽引してきたと言っても過言ではない。しかし、近年では、完成自動車の国内生産は縮小傾向にあり、海外生産は増加傾向にある等、国内外における生産体制の動向について変化が見られる。
ここで、近年のわが国における完成自動車の生産体制動向を把握するため、2001年、2011年の国内生産台数、海外生産台数、輸出台数を以下に比較整理する。
2001年 | 2011年 | 年平均増減率 | |
国内生産台数 | 978万台 | 840万台 | -0.8% |
海外生産台数 | 668万台 アジア:187万台 北 米:306万台 欧 州:103万台 |
1,338万台 アジア:755万台 北 米:307万台 欧 州:141万台 |
7.6% アジア:15.1% 北 米:1.1% 欧 州:4.7% |
輸出台数 | 417万台 アジア:35万台 北 米:180万台 欧 州:90万台 |
446万台 アジア:57万台 北 米:159万台 欧 州:100万台 |
2.2% アジア:5.3% 北 米:0.7% 欧 州:2.5% |
※年平均増減率は2001年から2011年の年平均増減率。
※台数は商用車を含む。
出典:各種資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)作成
表1で整理した通り、国内生産台数の2001年から2011年の年平均増減率が約-0.8%、海外生産台数の年平均増減率が約7.6%、輸出台数の年平均増減率が約2.2%となっており、国内生産台数や輸出台数と比べ、海外生産台数の増加が著しく、また生産台数も、2011年の国内生産台数が約840万台であるのに対し、海外生産台数は約1,338万台と、国内生産台数を遥かに超える完成自動車が海外で生産されている。また、地域別にみると、特にアジア地域における海外生産台数の年平均増減率が約15.1%と、近年急激に増加している。これは、わが国自動車メーカーがアジアにおける新興国等に進出し現地生産を進めた結果であり、今後も従来のガソリンタイプの大衆車を中心とする新興国の旺盛な自動車需要に応えるため、海外生産が進むものと推察される。
一方、国内生産台数の年平均増減率は約-0.8%となっており、経済成長の低迷、自動車の平均使用年数の長期化等の要因により伸び悩んでいることが分かる。しかしながら、自動車自体も従来のガソリン車等からハイブリット車や電気自動車等の次世代自動車への転換が進むものと想定され、こうした高い技術力が必要な次世代自動車の生産は、今後、国内生産が増加するものと思われる。
この様に、わが国における完成自動車の生産体制は、国内と新興国等の海外で大きく二分化されるものと想定され、各マーケットに対応した生産体制への移行が益々進むものと考えられる。こうした完成自動車の国内外における生産体制動向を踏まえ、わが国自動車産業の国内生産の活性化を支えるためにも、次世代自動車に対する免税措置の実施、開発・購入補助策の導入、充電設備の設置等といった、更なる次世代自動車普及のための施策等の検討の重要性が高まるものと考えられる。