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変更が望まれる識別マーク-紙を中心に-

2013/05/27
櫻井 仁

家庭から排出されるごみの容積の約6割を容器包装廃棄物が占め、最終処分場の逼迫への対処の必要性から、容器包装リサイクル法が平成9年に施行され、15年が経過した。

容器包装廃棄物の排出量は減少したものの、家庭から排出されるごみの量全体に占める容器包装廃棄物の量は必ずしも減少していない。今後は、容器包装廃棄物そのものの発生量が減少すること(リデュース)、くり返し使用できるガラスびんやプラスチック容器などを繰り返し使用すること(リユース)の推進が重要となろう。あわせて、リサイクルの質を高めていくこと、すなわち、優先順位の高い材料リサイクルに利用される量を高めていくことが引き続きの取組課題となろう。

容器包装廃棄物の中でも、複合素材を含むがゆえに材料リサイクルへの利用量が拡大しないものとして、プラスチック製容器包装と紙製容器包装が挙げられる。

材料リサイクルの利用量拡大に向けては、最終需要の拡大が必要不可欠であるが、プラスチック製容器包装についても紙製容器包装についても、国内需要は横ばいで推移してきた。技術開発を通じた新用途開拓や既存需要拡大に向けた努力や、リサイクル費用低減に向けた取組は進められたものの、需要拡大の特効薬となるものは見出せなかったといえる。

現在、紙製容器包装については、生活者からの排出時点で、有価物の古紙資源として回収するルートで雑誌に混合して排出されたり、紙製容器包装ではない有価の雑がみと一緒に排出されることが多い。紙製容器包装のうち、主として製紙原料での利用が可能な単体素材と、主として燃料等での利用が可能な複合素材を消費者からの排出時点で分別排出でき、有価物の古紙資源回収ルートで紙製容器包装の単体素材の回収が可能になれば、国内製紙メーカーの原料調達量が増え、材料リサイクル利用量が増える可能性がある。

紙製容器包装の単体素材と複合素材を生活者からの排出時点で分別排出させる方法として識別マークを活用するアイデアが出されている。経済産業省委託調査「紙リサイクルシステムの強化に関する調査報告書」(平成24年3月)によれば、製紙原料向きのものと製紙原料以外のものが区別できるよう識別マークを2つに分ける案や、製紙原料に向かないものだけに混合物であることがわかるようなマークをつける案、等が出されている。

生活者の90%以上は各種容器包装の識別マークを知っているものの、識別表示を「容器包装を分別するためのもの」と正しく理解している割合は、43.5%という結果が出ている。むしろ、「その素材が何で出来ているのかを示すもの」への回答が半数弱(48.4%)を占めている。(経済産業省委託調査「平成24年度環境問題対策調査等委託費(容器包装リサイクル推進調査〈容器包装リサイクル制度を取り巻く情報調査・分析事業〉)」)

このような理解が、「紙マークのついたものはすべて製紙原料として利用される」との誤解を生み、製紙原料として利用できない紙製容器包装が、製紙会社の原料に混入し、製紙工場でトラブルを発生させている。製紙工場でのトラブル発生を減少させ、リサイクルの質を高めていくためにも、まずは、識別表示への生活者の正しい理解を推進することが必要となろう。

正しい理解を進めていくのにあわせて、紙製容器包装には、材料リサイクルに回る紙製容器包装と燃料等での利用に回る紙製容器包装があることを理解してもらうことで、紙製容器包装の識別表示を変更することも可能となろう。製紙原料向きのものと製紙原料以外のものが区別できるよう識別マークを2つに分け、生活者が識別マークに基づき分別排出を徹底すれば、資源となる古紙回収ルートへの製紙原料とならない紙製容器包装の混入防止が実現し、さらには、製紙原料に向かない紙製容器包装の製紙工場への混入防止が実現することとなる。今後の容器包装リサイクル法の改正議論の中で、識別マークの変更が議論の遡上に上ることを期待したい。

識別表示への理解(n=3,000)

(資料)経済産業省委託調査「平成24年度環境問題対策調査等委託費(容器包装リサイクル推進調査〈容器包装リサイクル制度を取り巻く情報調査・分析事業〉)」

持続可能社会部
主任研究員
櫻井 仁

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