経営戦略
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地域に根付く祭りは、その起源や趣旨は多様であるが、その地域の伝統文化の一部を担い、地域の関係者にとって、我が“まち”の誇りとして捉えられている。
しかし、近年、我が国では人口減少や高齢化、ライフスタイルの変化など、地域社会を巡る状況が大きく変わってきている中で、祭りの活力も衰退傾向にあることが指摘されている。
祭りは地域の伝統文化として存続させるべきであるという主張がある一方、祭りが衰退していくことは時代の潮流の中でやむを得ないという考えもあるだろう。しかし、祭りを維持・発展させることにより、様々な地域の社会課題を解決し、地方創生を実現することができるとすれば、祭りは新たな役割を持つものとなる。また、祭りが多様な役割を担っていくことは、祭りに新たな資源が組み込まれることとなり、結果的に祭りを守ることにも繋がっていくだろう。
平成29年、文化芸術振興基本法が文化芸術基本法に改正され、単なる文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業などとの連携が謳われたことも踏まえると、祭りが持つ“社会課題解決能力”を分析するに相応しいタイミングといえる。
本レポートをとりまとめるにあたり、以下の5つの祭りの関係者にご協力をいただいた。
関係者へのヒアリング等を踏まえ、やはり、祭りは様々な社会課題解決能力を有することが確認できた。以下では、種々の政策分野と関連付け、祭りの社会課題解決能力を整理して示す。
図表.祭りの持つ社会課題解決能力(例)
注:個別の祭りについての社会課題解決能力は、関係者へのヒアリング調査をもとに、執筆者が判断を加えたものである。
祭りに社会課題解決能力があることが明らかになったことで、これを発揮することにより、地方創生を実現する手立てとなるだろう。
具体的に祭りを核とした地方創生を実現する上では、祭りが持つ社会課題解決能力は祭りによって異なっていることに留意する必要がある。このため、まずは自分たちの地域の祭りがどのような社会課題解決能力を有するかを明らかにしていくとともに、その祭りが地域の伝統文化として本来どういう役割を担ってきたかを熟慮することが重要である。その上で、社会課題解決能力を発揮するための手法を検討・実行することが求められる。また、この際、祭りの主体となっている人々だけでなく、該当する社会課題の解決を目指している人々と連携・協働することにより、より効果的な手法を構築できる可能性がある。
ただし、祭りに様々な社会課題を解決する手段としての役割がある一方で、祭りは地域の伝統文化そのものでもあることを忘れてはならない。新たな役割を祭りに付加するという機会により、その本来の役割が損なわれることは避けるべきである。
自治体における祭りの担当者や地方創生の担当者、あるいは祭りの主催者の方々は、祭りが本来持つ意義と新たに付加される役割との間に適切なバランスを保ちながら、祭りの維持・発展と地方創生の両立を目指していただきたいと考えている。