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「サバイバル能力」育成の必要性~青少年教育の観点から~

2018/05/07

1.現代の青少年教育施策

青少年教育は、法令上の定義はないが、学校教育の対となる社会教育のうち、青少年を対象とする教育を指すことが一般的である。また、その対象年齢については、概ね30歳未満であることが政府の計画において示されている(「子ども・若者ビジョン」平成22 年7月23日 子ども・若者育成支援推進本部決定(内閣府))。

現代における青少年教育施策は、青少年の体験活動の推進が主たるものとなっている。この背景には、子供たちの意欲・関心や規範意識と体験活動に正の相関関係が見られるという指摘がある(「今後の青少年の体験活動の推進について」平成25年1月21日 中央教育審議会答申(文部科学省))。この意欲・関心や規範意識を醸成することを目的として施策を推進することはもっともであるが、時勢を踏まえて、青少年教育に今求められるあり方を検証したい。

図1 意欲・関心、規範意識と体験活動の相関関係

図1 意欲・関心、規範意識と体験活動の相関関係

出典)「今後の青少年の体験活動の推進について」平成25年1月21日 中央教育審議会答申(文部科学省)
資料)「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」平成22年10月 (独)国立青少年教育振興機構

2.今求められる教育の在り方を探る

平成23年3月11日、我が国は未曽有の大災害に見舞われた。また、平成28年4月、熊本地震が発生し、その後も台風など大きな天災にさいなまれている。これらの事象は、備蓄や支援物資が得られない場合、どのように安全な水を確保するのか、どのように避難所を確保するのか、どのように他者との助け合うのかなど、生命を脅かす危機的状況からの脱却を図るための最も根源的な力(「サバイバル能力」)を身につける必要性を痛切に感じさせる出来事である。大規模な災害の発生に関する予見が困難な状況にあって、この「サバイバル能力」は、今まさに身につけるべき基礎的素養と言える。

一方、誰がその教育をするかという観点で、学校教育の状況を見ると、日本の学校教員の勤務時間は世界レベルで見ても多いという結果が出ている(「国際教員指導環境調査(TALIS2013)」平成26年6月25日 OECD)。このような状況において、防災教育を実施する学校においては頭が下がる思いであるが、より実効的な教育を全国的に展開することを鑑みると、既に時間の余裕がない学校教育の現場に全てを担ってもらうことは困難ではないか。

3.「サバイバル能力」の育成を青少年教育で実現する

では、誰が「サバイバル能力」の教育の担い手になり得るのか。これまで、どう生きるかの知恵を子供たちに伝えてきたのは青少年教育の指導者の功績が大きい。「サバイバル能力」の育成の担い手は、彼らこそ相応しいと考える。具体的には、NPO法人自然体験活動推進協議会において、自然体験活動に関する専門的な知識と技術を有する自然体験活動指導者を認定しており、約15,000人の認定者(平成24年3月現在。自然体験活動推進協議会HPより)がいる。このような人材を教育プログラム策定時から参画させることで、より実効的な事業を計画できるようになると思われる。

このようなプログラムの一例としては、全国各地の自治体で積極的に行われている防災キャンプをさらに発展させ、水や食料を自らの力で調達しなければならないような、厳しい環境の中で生活するようなものがあるだろう。

知的基盤社会といわれ、高度な教育が積極的になされている。一方、災害等によって、社会基盤が大きく揺らいだとしても、たくましく生きるためには「サバイバル能力」が不可欠となる。この能力の育成こそ、今の青少年教育に求められるミッションの一つであると考える。

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