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日本経済の成長力持続の鍵

2008/01/01

 久しく続いているわが国の2%経済成長の主役は好調な世界経済を背景とする輸出および、それによって収益性が急回復した企業セクターによる活発な設備投資である。
 このパターンが消費を主役とする内需主導のものに転換することが期待されているのだが、企業収益の増大が家計の収入増加に繋がる道筋は細ったままである。さらに牽引役である輸出および設備投資にはその勢いをじわじわと弱めさせる構造的要因が存在するため、2%成長の持続は容易ではないだろう。
 このままでは財政再建も覚束なくなる可能性が高く、様々な不具合が顕現しそうである。至急に新たな成長軸を見つけ出し確かな位置づけのものに育てる努力が必要であり、その有力な候補が地域の活性化である。
 現在地域や地方の問題が格差という観点から論じられ、政治的にも大きなイシューなっている。しかし表面を糊塗するようなポピュリズム的な施策はかえって地域の活性化にはマイナスだろう。
 格差問題の背景には地域の成長力の格差がある。地域が自主的、自立的に活性化に取り組み、中央政府が2007年の骨太の方針にある「地域の活力なくして国の活力なし」という立場に立ってバックアップすることによって地域の活力が高まりわが国全体の成長力が強まれば理想的である。そうなれば客観的な数字で測る地域間格差が縮小する保証はないものの、それを由々しき問題とする風潮は後退するだろう。
 しかし地域の活性化にはまず地域のマネジメント能力を高めることが必要である。このためにはローカルマニフェストの仕組みを活かし、地元の大学や金融機関などの地域インフラを活用し、またソーシャルキャピタルを涵養するなどして、地域が進化することが必要である。
 これにより地域経済の成長力が高まることがある程度可能になるだろう。しかし現在の都道府県を基本単位として地域の活性化を図るには、地域資源の不足や偏在により限界がある。より広域で取り組むことが効果的であり、分野を絞った広域連携で成果をあげている例がすでにみられる。
 しかし地域の活性化を本格的な成長軸とするためには、都道府県を超えて総合的な企画、実行ができる体制を作ることが急務である。関西ではそのような試みがなされようとしており、中央政府は地方分権改革推進の方向を先取りする気概を持ってサポートすべきである。それによって、動きが他の地域にも広がれば成長軸としての位置づけも固まり、また道州制に向けてのトライアルとしての意義も期待できよう。

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