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「限界集落」化の歴史的プロセスに見る山村の未来

2009/01/01

 大野晃氏は、高知県の中山間地域の現状から「限界集落」という概念を提唱した。氏は昭和30年代以降の高度経済成長期以降の山村(「現代山村」)を分析の対象とし、高度経済成長による地域間格差の進行や林業衰退を「限界集落」化の歴史的プロセスとした。
 本稿では、大野氏と同様に高知県の山間地域を対象にし、氏が対象としなかった「限界集落」化以前の山村に注目し、「限界集落」化の歴史的プロセスに迫った。
 その結果、「限界集落」化以前の山村では、川の流域を中心として、山資源の平野部での需要・消費と山間部からの供給のサイクルによって、人・物が動き、農・工・商業が一体化してひとつの経済流通圏が形成されていたことが明らかになった。米もろくに作れず貧しいかに見える山村が、中世以来栄えてきた理由は平野部や都市部と結びついた豊富な山資源の活用にあったのである。
 しかし、高度経済成長以後の山村では、それに伴う生活様式の変化によって山資源の都市部・平野部からの需要を失い、その発展を支えた生業を衰退させた。結果、山間部は平野部や都市部との結びつきや関係性を失い孤立していったのである。つまり、大野氏が述べる高度経済成長による地域間格差の進行や林業衰退は、山の生業衰退以後に起こった現象であり、「限界集落」化を決定づけた要因でもあったのである。
 山村社会が失った、河川流域の地域的な関係性・結びつきを取り戻すことが地域再生にとって必要である。

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