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世界経済の構造変化

2009/01/01

 本稿は、人口動態や潜在成長率、購買力平価などの経済分析の標準的な手法に基づいて、世界経済が2025年にかけてどのような構造変化をたどるかを考察する。
 まず、各国地域の潜在成長率を計測し、人口動態や資本ストックを考慮した長期の平均成長率を検討する。金融危機にともなう米国の対外不均衡の調整は、世界経済の成長テンポの抑制要因となる懸念を孕むが、米国の家計部門での貯蓄増加は政府部門での投資増加によって相殺されるとみられ、不均衡の調整は緩やかに進む可能性が高い。購買力平価が示唆する為替相場の動向を踏まえると、中国経済の存在感の高まりが読み取れる。
 ただし、中国経済は近年の高成長局面で、資本ストックを過剰に積み上げてきた可能性がある。このため、今後数年間はストック調整局面に入ることにより、二桁成長の時代から6%程度の中成長局面へ移行する見通しである。もっとも経済成長が持続することにより、2020年頃には中国の輸入額が米国を上回り、米国の個人消費が各国の経済成長をけん引する一極構造に変化が生じることになろう。
 中国では経済水準の上昇にともない中間所得層が増大する。世界経済にとって、中国経済は新たな需要を創出するフロンティアであると同時に、中間層に属する労働力を大量供給する要因でもある。先進国企業が新たなビジネス機会を手にする一方、製造業の一部にとどまってきた低賃金国への代替の動きが広がることで、先進国の労働者は雇用機会の喪失につながる。先進国は国内の中間層の二極化による格差のさらなる拡大への対処が望まれる。

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