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戦後日本における人材育成:「失敗」の構図と改革の方向

2009/04/01

 日本の人材育成システムには、教育が格差拡大装置として機能することや「学校から仕事への移行」の仕組みが不完全なことなど、「失敗」が内在していた。しかし、高度成長から1980年代に至るまでは、教育と経済成長の間に好循環が形成され、それらの「失敗」が顕在化せずに済んだ。それには、日本の人材育成に企業が非定型的ながらも強力に関与し、若年労働者に熟練形成を行う、事実上の「学校」として機能したことも大きい。
 ところが、1990年代に入ってバブルが崩壊し、日本経済が低成長に移行するとともに、日本企業がさまざまな構造問題に直面する中で、教育と経済成長の好循環は崩れ、むしろ悪循環が形成されそうな状況にある。そのため、人材育成の「失敗」が次第に顕在化するようになった。たとえば、期待成長率が低下して教育需要が全般的に減少するとともに、学力や教育達成面で階層性が明確に意識されるようになるほか、フリーターやニートの増大など、「学校から仕事への移行」の仕組みの脆弱性が明らかになっている。
 このように顕在化してきた人材育成の「失敗」に対して教育行政は十分に適切な対応をしておらず、企業もこれまで果たしてきた「学校」としての機能を発揮する余裕を失っている。したがって、政府が積極的に問題解決に乗り出す必要がある。初等中等教育の一層の充実と、学力がそれほど卓越していない層の底上げを狙った教育資源の配分、そして、教育の職業的意義を高めるために、義務教育を終えた段階での職業訓練システムの整備がそのために必要な対応である。

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