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ヨーロッパ諸国の教育改革からの示唆

2009/04/01

 OECDは、教育分野で特異な活動を展開している国際機関である。複雑な国際関係の結果、OECDは、1988年より「国際教育指標(INES)事業」を開始し、1992年より『図表で見る教育(Education at a Glance)』を刊行している。国際教育指標作成過程で、国際学力調査PISAが生まれることになる。とりわけ、OECDは、持続可能な経済発展をめざして「社会資本」に注目しているので、PISAでは問題解決のプロセスや非認知的な側面が強調されることになった。
 また、内政問題とされてきた義務教育は、グローバル社会では国際問題となっている。義務教育の成果をコンピテンシーと定義し、その中身について合意を得るために、「コンピテンシー定義・選択(DeSeCo)計画」が開始された。欧州委員会教育文化総局も、コンピテンシーの定義を整理している。取り出されたキー・コンピテンシーでは、多様性・異質性を前提にした相互交流の力、自律性という視点から自ら目的を持ち学び続ける力が強調されることになった。
 私たちがヨーロッパの教育改革から示唆を受けるとすれば、国際教育指標の質の定義とその確立過程である。私たち日本人は、正解はひとつ、正しい答えを学ぶ・覚えるという学習観にとらわれている。ヨーロッパの政財界・教育界は、グローバリズムのなかで、国民という型を超えて学力の組み直しが行われていると認識し、多文化・多言語・多民族という社会とそこに生きる異質な者を認め合いながら、いかにそれを交流させるかという点にこそ学力の中心課題があると判断したのである。いかなる学力のグランドデザインを描けるかが問われている。

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