経営戦略
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日本企業の雇用の本質はメンバーシップ制にある。雇用も、企業と社員の間で交わされる一種の契約に他ならない。特定の仕事があり、それに従事することが予め決められているのが欧米だが、日本では何の仕事につくかは最初から不明である。つまり組織に入り仲間となることこそ、日本の正社員雇用の本質であり、これは江戸時代の商家から連綿と続く自生的秩序といってよい。
メンバーシップ制が要請する働き方は、社員の企業への従属性を2つの意味において高める。ひとつは人的従属性である。企業と社員は上下関係にあるから、企業による指揮命令は絶対である。容易に解雇はなされないが、職種転換や勤務地の移動など、意に沿わない命令にも服さなければならない。育児や介護といった、仕事とは別に担わなければならない社会的義務も軽視されがちだ。
もうひとつは経済的従属性である。特定の仕事の提供により対価を得る関係ではないから、毎日の生活のある部分を企業での労働に費やせばよい、という考えにはなりにくい。家族や地域社会といった共同体とはまた別の、企業という共同体で、それこそ滅私奉公が求められるのである。その結果、企業から受け取る賃金のみが生活の糧として不可欠のものになりがちだ。
本稿は、年功制の解体による、そうしたメンバーシップ制の弱体化を不可避のものと考え、働く側がメンバーシップを自ら弱めることの効用を説く。具体的には、自宅が職場となるテレワーク、1日あるいは週単位の労働時間を短くした短時間正社員、副業への従事など、働き方の多様化を進めることである。今後の日本には多様な働き方に応じた、多様な正社員が求められる。