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リーマン・ショック後に雇用情勢はどう変貌したのか

2010/04/01
小林 真一郎

2008年9月のリーマン・ショック直後の急速な景気の悪化は、わが国の雇用情勢に対し深刻な打撃を与えた。2009年春からの景気の持ち直しにともない雇用情勢は最悪期を脱したものの、失業率が高止まるなど依然として厳しい状況が続いている。
リーマン・ショックは雇用情勢に対し、これまでの景気悪化局面とは異なる影響を及ぼした。ひとつは雇用情勢の悪化ペースの速さであるが、これは非正規雇用の増加を背景に発生したものである。もうひとつは経済活動水準の急低下にともなう、水準自体の問題である。景気の急速な悪化は企業の過剰雇用を生み出したが、経済活動水準の落ち込みの大きさから判断すると、過剰雇用が解消するまでに相当の期間が必要となる可能性がある。
さらにリーマン・ショックは、これまでも進んでいた労働市場の構造問題の深刻さを改めて浮き彫りにした。こうした問題としては、①企業の人件費削減姿勢が一段と強まっており、景気悪化時には雇用・所得情勢が悪化する度合いが今後さらに高まる可能性がある、②雇用情勢の悪化に際しては若年労働者に最もしわ寄せが行きやすく、いわゆる就職氷河期やフリーターの増加といった問題が景気のサイクルに合わせて今後も発生する懸念がある、③雇用情勢が厳しいにもかかわらず、求人と求職のミスマッチの解消が進んでいない、が指摘できる。
これらの構造問題が未解決のままであれば、再び景気が悪化した場合には構造問題がさらに深刻化し、雇用情勢が比較的短期間のうちに大幅に悪化するリスクがある。一般に雇用情勢は景気に遅行して変動するとされてきたが、今後は景気の動きと一致して変動する傾向が強まるものと思われる。

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