経営戦略
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「正社員」という用語が一般的に使われるようになるのは1980年前後からであり、その原因はパートタイマーの増加であったと考えられる。時代的にみれば、「社員」というステイタスは戦前の「エリート」から戦後「ふつうの従業員」へと徐々に変化していく。そして、1980年代に入って「正社員」という雇用身分が新たに一般化する。
本稿では、「正社員」の形成に焦点を合わせる。まず「正社員」についての統計的整理をしたのちに、正社員の「処遇」と「働き方」という観点からその形成プロセスを検討する。処遇とは、使用者が従業員に提供する労働条件であり、3つの要素に分けてみる。①長期安定雇用、②査定付き定期昇給賃金、そして③昇進機会の提供である。長期的に安定した雇用とまじめに働いていれば賃金が上昇するだけでなく、昇進機会もあるということである。
こうした処遇を従業員に提供する対価として企業が求めるのが正社員としての「働き方」である。それは、職務の範囲が不明確であり(職務の包括性)、それだけ企業のその時々の要望に即して働くことが当然視される。残業や配置転換、転勤なども企業命令が絶対であり、個人の要望は部分的にしか配慮されない。このように「正社員」を捉えると、それぞれの要素が一気に成立したとみることが容易ではないことが分かる。総じて言えば、現在の「正社員」は、長い歴史プロセスを経て高度経済成長期に成立し、1980年代の安定成長期に普遍化したといえる。なお、この「正社員」の処遇と働き方は片稼ぎモデルであり、男女雇用平等の観点から見直しが必要となっている。