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日本のものづくりの行方

2011/01/01
真子 百合

 日本のものづくりへの危機感は、日本の経済的地位が落ち始めた1990年代後半から始まり、中国、韓国、台湾や新興国の活躍が目覚しいここ数年で最高潮になっている。すり合わせという従来の勝ちパターンが通用し難くなり、元気な海外勢と比較して企業体力が弱まっている中で、新たな成功パターンをつくることを模索し苦労しているのが今の日本の製造業の姿である。
 ものづくりに関しては、これからの日本の製造業が避けて通れない課題が3つある。それは、①海外シフト、②短期間開発・コストダウン・品質確保の同時実現、③生産に関する人材不足への対応、である。今回我々は日本の製造業に対象にインタビュー調査を行い、ものづくりの現状と今後をヒアリングした。これらの課題の解決への取り組みは、「生産の自動化」「フロントローディング」「SCM」の3つのキーワードで整理できた。また、新興国市場の獲得のためには、汎用品や構造が単純な製品ほど、生産だけでなく設計や開発の一部も消費地のある海外にシフトする動きが進みつつあることが分かった。
 生産が海外にシフトしていく動きは避けられない。それでも日本でものづくりを続ける意義は何か。これまでの日本のものづくりの繁栄は日本のユーザー(セットメーカー、消費者)に鍛えられてきた結果だ。今の日本は非常に厳しいマーケット環境だが、あえて身を置いて高いハードルを越える切磋琢磨をすることが技術革新を産むのではないか。高い事業コストに対して高生産性の達成、ユーザーの高い要求水準と変化するニーズに対して敏感・迅速に応える高感度の開発力、これらの技術革新が海外勢に対して競争優位を築く日本のものづくりの行方の活路があると考えている。

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