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地域から震災復興を考える

2011/07/01

 今回震災の死者・行方不明者は2万2,000名余りと、阪神・淡路の3倍以上にのぼったが、耐震改修の進展もあり、津波以外の原因で亡くなった方は100名未満だった。次の機会に津波被害をもゼロに近いところにまで抑えるには、高台や内陸の農地への、従前よりもコンパクトな住宅地再建が肝心だ。だが放棄地の多さ等から、地権者の積極的な参加を前提とした旧来の区画整理制度は機能しない懸念が大きい。自治体と住民が出資するまちづくり会社が、沿岸被災地かと内陸部を広く定期賃借し、被災住民に内陸の宅地を転貸、沿岸は産業に利用する、という方式を検討すべきだろう。
 津波以上に経済を直撃したのは消費の不振だった。サプライチェーンの切断による供給制約が注目されがちだが、国内での物価上昇はわずかだ。今世紀に入って地方はもちろん首都圏でも加速しつつある生産年齢人口の減少を背景にした内需不振に、計画停電と自粛ムードが追い討ちをかけ、震災による供給減少を相殺してしまっている。政府の財源に限りがある中、企業には、耐震改修や省エネ・エネルギー多様化に向けた家計の投資・消費の喚起を求めたいし、個人個人が貯蓄の1%を震災復興事業に寄付することも提言したい。
 日本は「カラミティ・プルーフ」の国=「免災」構造の国という国際的なブランドの獲得を目指すべきだ。幾度天災にあっても人的被害はなく、バックアップインフラが充実していて、迅速に復興する国。中枢機能が札幌から福岡にまで分散し、全体の機能停止が起きない国。天災が少ない故に備えもない国よりも、よほど安全な国を構築していく今世紀にしようではないか。

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