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真の生物多様性社会の構築に向けて

2012/04/01

 COP10の開催から1年半を経た現在、国内において生物多様性が話題として取り上げられる機会がかなり少なくなった。本稿では、生物多様性の社会的認知度が低い理由や、わが国の生物多様性の現状や課題を分析したうえで、それでもなお重要性を増す生物多様性が環境問題の主流であるべき理由や推進のポイントを示している。生物多様性は、言葉として分かりにくいうえ、解明すべき研究課題が多い難解な
 テーマであるが、身近な問題かつ影響範囲が広範な重要な問題である。実際、わが国においても、生態系の利用管理の低減や外来生物の拡大等により、生態系・野生動植物の損失や、生態系サービスの劣化は深刻な状態にある。そのような中、民間企業や地方自治体において、主に生物多様性の保全を中心とした活動が進められているが、実質的な課題と実際の活動状況との間に一部乖離が見られ、また保全対策の実施に向けた体制整備の遅れ等、社会における生物多様性の本格的な取り組みは不十分なところも多い。
 このような問題解決を含めた生物多様性の社会への主流化には、さまざまな地域において幅広い保全活動を誘発する社会的な枠組みの構築や、自然科学および社会科学の両面から、生物多様性の仕組みや評価の方法等に関する知見を集積する必要がある。これと並行し、地球温暖化防止が辿ったステップを参考にしつつ、生物多様性を企業活動や行政活動に組み込んでいくべきである。そして、真の生物多様性の時代の到来を確実なものにするためには、先導する地域が必要であり、たとえば関西が、その担い手として全国へ発信していくことが考えられる。

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