経営戦略
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~慶應大先端生命科学研究所とスパイバー社の挑戦~
平成25年5月、山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所から生ま れたバイオベンチャー企業であるスパイバー社は、クモ糸新素材「QMONOS(ク モノス)」の記者発表を大々的に行い、石油に依存しない新素材の時代が到来する ことを高々と宣言した。
本稿では、このスパイバー社が鶴岡に生まれた軌跡を追いながら、地方から世界 水準のイノベーションを生み出す産業クラスターモデルのあり方について考えてみ たい。
そこには、来るべき知識産業社会を見通し、農業の伝統に培われた生命科学の基 盤を、さらに先端の研究所の誘致によって、最先端バイオ研究を核とした産業クラ スター政策に引き上げようとする地元自治体、首長の強固な政策理念が背景にあった。
また本稿では、慶應義塾大学先端生命科学研究所が地元の期待に応え、次々と世界レベルの成果を上げ、や がて研究所発の本格的バイオベンチャーが創出され、クラスター形成が産業面で具現化していくプロセスを見 ていく。さらに、ベンチャーであるスパイバー社と小島プレス工業社の共同事業化に着目しながら、先端研究 と人材育成が原動力となって革新的技術が生まれ、その技術を武器にベンチャー企業が誕生し、さらにそのベ ンチャー企業の技術を求めて他地域に本社のある企業が立地して事業化が始まる、という一連のプロセスの循 環を誘導することが、今後の地方におけるイノベーション創出の鍵となることを述べる。
あわせて、スパイバー社の挑戦を紹介しながら、その源泉が若い研究者の柔軟な発想と高いモチベーション に裏打ちされていることを検証し、そうした人材の連鎖的育成に向けた構想について考察する。