経営戦略
三菱UFJフィナンシャル・グループ一体となっての顧客支援も含めて、他社にはない独自の総合ソリューションをご提供致します。
今、日本の中堅・中小企業では経営承継が大きな課題となっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)の安達幸裕執行役員と、同社が寄付講座を開講している明治大学ビジネススクール(以下、MBS)の落合稔教授に、日本における経営承継の現状と、あるべきコンサルティングの姿について語ってもらった。
落合 稔
明治大学 ビジネススクール
(グローバル・ビジネス研究科)教授
落合 日本の企業数の99.7%は中堅・中小企業で、その大部分がファミリービジネス(同族企業)です。ところが過去15年でその約2割が減少、現在は団塊世代に当たる高度成長期の創業者たちが経営承継に悩んでいます。
その理由は、少子高齢化による後継者不足と、市場環境の変化で既存事業の魅力が失われつつあること。経営承継には第2創業が必要になるのですが、親の苦労を見て躊躇(ちゅうちょ)する後継者(子弟・子女)が多いのです。
安達幸裕
三菱UFJリサーチ& コンサルティング 執行役員
戦略第2ビジネスユニット長
安達 落合先生がおっしゃるように、中堅・中小企業は日本経済の主役。その経営承継がうまくいかないと経済のダイナミズムが損なわれ、国力が落ちる。日本の経済成長を持続させるためにも、適切なコンサルティングが必要になっていると実感しています。
落合 企業が永続していく仕組みとして、ファミリービジネスは最適な形態だと思います。ファミリーという要素が入ることによって、所有と経営がしっかり受け継がれ、迅速な意思決定や、長期的な投資が可能になるからです。その承継には、早くからの後継者育成、親族間の紛争を防ぐガバナンスの整備など、長期的で戦略的な承継計画が必要です。ところが高齢の経営者でも、承継はまだ先のことと考えている方が多いですね。
安達 確かに経営承継では、後継者育成や次世代体制づくりなどが必要になり、最低でも10年ほどの期間がかかります。
私たちは経営承継を「経営そのもの」と広義に捉え、経営者に寄り添いながら、長期間にわたり支援するコンサルティングを目指しています。支援する対象は企業経営そのもので、われわれはそれを「ゴーイングマネジメント」と呼んでいます。
安達 オーナー経営者における承継時の課題には、戦略の見直しや後継者育成などの「ソフト」、資本政策や組織再編などの「ハード」、家族間調整などの「ファミリー」、個人資産や株式の承継などの「資産承継」があります。資産承継については三菱UFJフィナンシャル・グループの銀行などに専門部署があるため、私たちが注力するのは資産承継以外の分野です。主に「継がせる側と継ぐ側の意識改革」に力を入れ、特に経営者満足(PS:President Satisfaction)を重視しながら、経営戦略作りなどの支援をしています。
私たちのお手伝いしている内容を一言で言えば、”意思決定と実行の支援”です。意思決定とは、課題を抽出・選択し、優先順位を付ける計画作りのこと。実行とは計画の着手と浸透、結果を出すこと。これが意外とできていないケースが多いです。コンサルティングの語源は、ラテン語で「共に座る」こと。経営者と真剣に対峙し、時には第三者として言いにくいことも指摘しながら、共に経営課題を解決することを心掛けています。
現在、そのための体制づくり、特にコンサルタントの教育体制の強化にも取り組んでいます。
落合 MBSではファミリービジネスの発展を教育の柱として、後継者育成やサポート人材の育成に力を入れています。実際に学生には後継者となる子弟・子女も多く、より実践に近い知識を求めています。MURCの寄付講座では、プロのコンサルタントの方々が生きた知識を提供してくれます。大学の社会貢献という意味でも、この産学連携には価値があります。
安達 MURCとしてはファミリービジネスの後継者らが多く通うMBSでの講義を通じて、後継者育成の支援を実施し、産学連携で社会的使命を果たしていきます。そして経営承継に関する考え方を広く周知させ、「経営承継なら MURC」と言っていただけるよう今後も尽力していきます。
MURCはオーナー企業の後継者が多く通うMBSで寄付講座を開講している。実践経験豊富なコンサルタントや、実際に経営承継を経験した外部経営者が講義を行う。授業内容は経営承継の基礎知識から、具体的な承継スキーム立案のポイントやケーススタディーなど。講座を通して後継者育成の支援を実施し、産学連携で社会的使命を果たす目的もある。
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2017年4月からスタートした寄付講座(左)と9月に行われたシンポジウム(右)で講演する安達氏