経営戦略
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人事制度は、企業を取り巻く数多くの要因により形作られている。それらの要因の中でも特に重要なのは「人件費支払い能力」「仕事の分け合い方」「コーポレートガバナンス」の三つである。本稿ではこれらが2020年にどのようになっているかを見通すことで、その時点における人事制度の姿を考察した。
まず、2020年にはバブル入社世代および団塊ジュニア世代が管理職層の上級に差し掛かるという社内人口構成の問題から、管理職層の賃金負担が課題となり、職務型の等級制度が検討されている可能性があると分析した。次に、仕事の分け合い方においては企画的作業と単純作業への分化が更に進み、細かなグループ別の人事管理が進展していることが予想された。そして、コーポレートガバナンスの変化の分析からは、M&A等の進展により会社の主権者が不安定な状態が続くことで、社員の伝統的忠誠心が低下し、企業と個人の関係がよりドライに市場化したものとなり、人事制度は賃金面では短期精算志向、評価面では厳密・丁寧な評価が要求されるようになることが予想された。
このように見てくると、2020年の人事制度は、90年代後半から日本企業の人事制度に起こっている方向の変化が更に進んだものとして定着していると言って差し支えないだろう。
こうした環境下における主要な課題としては、「職務型人事制度」に社員が心理的に耐えられるか、伝統的忠誠心が低下しがちな中で上級管理職・経営者をどう育成するか、人事制度や雇用形態の異なる多様な従業員のコミットメントを引き出せるか、そのコミットメントの基盤となる公正さをどのように提供するか、などになる。