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「年功序列制か、能力主義か」

2007/07/01

 いわゆる日本型経営の特質の一つである年功序列制は、アンチ能力主義の代表と目されており、年齢順送り的な自動昇進・自動昇給の制度として人々の指弾の的となっている。そこから年功序列か能力主義(成果主義)かという二者択一が問われ、その挙げ句に日本型経営方式の全否定という言説が横行してきたわけである。
 しかし、このような認識には大きな問題がある。発生論的観点からしたときには、この年功序列制と呼ばれているものはアンチ能力主義であるどころか、能力主義・業績主義・競争主義そのものに他ならない。今日、年功序列制と呼ばれている昇進の形は徳川時代の武士の社会に源流を有しているが、それは今日、常識となっているような順送りの自動昇進エスカレーターでは全くなかった。それは下級身分の武士が身分主義の壁を突破して、より高い地位へと上昇していく能力主義の謂いに他ならなかった。
 日本社会では、人事は組織内の人間の内部昇進が基本となっている。任用に際しては、個々人の職務経験とそれに基づく技能の高度化、それを裏付ける具体的な業績などが基準とされる。このような原理にもとづき、そして出世競争をとおして、段階的に上位ポストへと駆け上っていく昇進システムが年功序列制にほかならない。それはアンチ能力主義であるどころか、能力主義そのものであり、この日本の文化伝統の中で育まれてきたタイプの能力主義は「OJT型能力主義」として規定されうると考える。

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