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ブラジルのデジタル・カルチャー振興政策

2007/01/01

 将来有望な成長市場としてBRICsが注目される中、ブラジル経済への関心は高まりつつある。情報通信分野の飛躍を背景に、ブラジルでは民主化ツールとしてのIT振興が積極的に展開されており、政府主導のデジタル・カルチャー振興政策がとられている。
 牽引役である文化大臣ジルベルト・ジルは、ブラジル音楽界を代表する現役のミュージシャンであり、ハッカーを自称するデジタル推進派である。2003年に発足した第一次ルーラ政権の下、ジルベルト・ジルが文化大臣に就任し、文化政策プロジェクトである「クルトゥーラ・ヴィーヴァ(リヴィング・カルチャー)」を立ち上げた。その骨子とは、全国の文化創造拠点あるいは文化プロデュース拠点、すなわち「ポントス・ヂ・クルトゥーラ(カルチャー・ポイント)」を有機的なネットワークで繋ぎ、地域コミュニティに根ざした文化活動を支援するというものである。これまでブラジル国内の文化産業はリオデジャネイロとサンパウロに極端に集中していることが問題とされてきたが、その二極集中の現状を是正すると同時に、文化活動への市民参加によってブラジル型民主主義の実践を試みていることがうかがえる。
 カルチャー・ポイントにおける創作活動を支える基盤は、フリーソフトウェアやオープンソース、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスである。著作権の弾力的な運用を目指すクリエイティブ・コモンズについては、文化省がそのオーガナイザーの役割を担っており、国内最大手のレコード会社が支援する等、特徴的な活動が見られる。また、こうした状況を背景に、ブラジル型Web2.0を目指すCGMサイトも創設されている。
 本稿では、これまで着目される機会のなかったブラジルの文化政策ならびにデジタル・カルチャー振興政策に注目し、直近の動向を報告する。

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