経営戦略
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生物学関係者や環境学関係者だけが生物多様性の価値を語る状況では「生物多様性の主流化」は難しい。伝統文化の関係者が文化と生物多様性の深い結びつきを理解し、語ることが重要だ。文化多様性についてはUNESCOを中心に文化多様性条約等の国際的取り組みが作られているが、生物多様性とも深く結びついたものとして認識され、研究も進展しつつある分野である。わが国の、特に京都を中心とした伝統文化を見ると、茶道、和歌、能、和菓子、和食等さまざまな要素の中に自然との結びつきを見いだすことができ、弘道館等茶室での実践ではそれらが統合した形で展開される。生物多様性は素材として、また資源として伝統文化の中に活用されているが、一方でそれらはそのままで使えるわけではなく、半栽培を含む管理や加工、流通まで含め体系が揃っていないと使うことができない。生物多様性は文化によって初めて資源化される側面がある。生物多様性の価値にとって文化多様性が重要な意義を持つ部分である。
こうした文化多様性は都市生活者に対して、食や文化芸能を通して生物多様性の価値を、特にエモーショナルな感性の部分で伝えるためには有効である。しかし、こうした文化の中で自然に触れて感情を揺さぶられるためには基礎となる体験の裏打ちが必要である。生物多様性保全のためだけでなく伝統文化の維持のためにも、子どもへの自然体験機会の提供等を地域戦略等で計画的に位置づけていく必要がある。
伝統文化と自然の結びつきは、各地の地域資源の再発見やブランディングにつながりやすいが、広く近隣地域を見ていかないとセルフオリエンタリズムに陥りがちな面もある。学術研究者の参画や地域でのコーディネート役を供給する自然史系博物館や大学等のプロデューサー機関も重要である。